学校講演会記録(2)

<アイメイトは私の目>

 私は大学院を修了した後、専門学校で教鞭を取るようになり、音声で文字をガイドする視覚障害者用のワープロを活用して、研究や教育に着手しました。自立へ向けて少しずつ問題をクリアしていくことができましたが、白杖をついて一人で歩くことはどうしてもうまくできません。物にぶつかったり、道に迷ったりした時の孤独感は、私を否応なしに絶望へと導いていくのです。センサーで物をキャッチし、それを振動で手に伝えてくれる機械というのがあり、私もそれを使用して歩行練習しましたが、想像したようにうまくいきません。厚い壁が行く手を塞ぎ、覆い被さってくるようでした。

 今では、そんな悩みがまるで嘘だったかのように思われます。行き詰まった状況を一変に切り開いてくれたのは、盲導犬ミントとの出会いでした。ミントと歩行するようになってからは、少なからず抱いていた劣等感も消え、世間の人達と対等に歩いていると、以前目が見えていた頃の感覚を思い出させてくれました。それはまさに、盲導犬が身体の一部であるということを意味しています。盲導犬を伴っての歩行を指導するアイメイト協会でも、独自に盲導犬を‘アイメイト’と呼んで、視覚障害者の目であることを強調していると教えられました。これは何を意味しているのでしょう。私だけでは身動きの取れない状況を、またしてもアイメイトという仲間に支えられ、人生を切り拓けたということです。

 病気にかかって視力に障害をきたしてからこれまで、私はかけがえのない数多くの仲間から援助を受け、困難を乗り越えて来られましたが、まさかアイメイトという盲導犬が光を失った私の目の代わりを務め、共に歩んでくれるとは全く想像していませんでした。それに、ミントを通して多くの人と知り合い、仲間の輪も広げられたのです。こうしたつながりのネットワークがもっともっと拡大できれば、お互いを理解し、お互いに助け合える社会をきっと築くことができるでしょう。

 星野有史『しっぽのはえたパートナー~子供の教育と盲導犬~』(法研)より

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