誰でも質問コーナー

 講演の後で聴講者からの質問に応えています。盲導犬にまつわることや福祉社会への課題など、そこでのコミュニケーションはとても有意義な時間になります。私の言葉が足りずうまく伝えられなかったこと、そうは言っても理解できないこともあるでしょう。そこをわかりあう第一歩にできれば嬉しいです。ここでは、その内容を“Q&A”方式で紹介します。

アメリカを歩行する写真
アメリカを歩行する写真

Q1 盲導犬は信号の色がわかるのですか?横断歩道ではどのように声をかけサポートすればよいのでしょう?

A1 犬は色がわかりにくいとされています。そのため盲導犬が信号を判断して渡るというように訓練されてはいません。路の曲がり角(コーナー)では止まるようにしつけられていますので、後は主人が耳で状況判断し進む方向を指示するのです。もし、誤って指示を出してしまったとしても、危険な状況においては盲導犬自体がそれをさっちし、主人の指示でも動かないように訓練されています。これを「利口な不服従」といって、盲導犬にとっては大変難しい仕事の一つになります。そのおかげで安心できますし、そこに信頼が生まれるのです。しかし、危険な状況は作りたくありません。私も状況を尋ねて歩行したいと思いますが、周囲にいる人達の様子がわからないので「いま、赤です」「青になりました」のように教えてもらえると助かります。言葉で説明しずらい混雑した状況などでは、左腕をつかませてもらう形で導いてください。

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Q2 盲導犬の食事は一日一回なのですか?何を与えているのですか?

A2 必ず一回でなければならないというわけではありません。体調によって、それを二回に分けたりということもあります。ドッグフードをあげて、水やミルクなどは状況に応じて与えます。ただ、いつどれ位の量を飲み食べたかなどは全て把握しておかなければなりません。排泄のコントロールに関係してくるからです。人間の食べ物は塩分やカロリーも高く健康を損なう危険もあり、拾い食いや飲食店に入った時のしつけも崩れがちになります。ドッグフードを原則にしていれば排泄時間の予測がつき、マナーも守れます。社会参加にはマナーが大切で、食事の後はタオルで口のなかも拭きますし、ブラッシングなどの世話も全て自分がして整えます。そうでないと主人として認めさせることができず、やがてしつけも崩れていきます。パートナーとは言っても犬は主従関係で成り立つ動物であり、愛情をもって可愛がることで無条件に慕います。主人を喜ばそうと良い仕事をする。それが盲導犬なのです。

レストランで食事をする写真
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Q3 盲導犬に散歩は必要なのですか?走り回らせたりしないとストレスがたまるのではないですか?

A3 盲導犬の場合は殆ど毎日外出しますので、それ以外に特別散歩に行く必要はありません。公園で走らせることもないのでストレスがたまり、早死にするといった噂もよく耳にしますが、全くそんなことはありません。一般のラブラドールレトリバー犬以上の寿命がありますし、仕事犬はストレスもたまらないと科学的に報告されています。人間も同じでしょう。毎日、家に閉じこめられていたら苦痛を感じますし、繋がれている犬よりは、常に主人と一緒に行動する盲導犬にストレスは少ないのです。私がハーネスを手にすればキースは自分から首を入れてきます。もし、嫌なら逃げるでしょう。しかし、神経を使って仕事をしているため疲れます。ゆっくり休ませて体調に気を配るのも大切なことですね。

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Q4 盲導犬は買うのですか?よく募金箱が置いてありますが、役にたっているのですか?

A4 盲導犬事業は自治体によって手渡せる数にも異なりがあります。一年間にその数を超えて申し込みがあれば順番を待つことになります。日本はよく盲導犬の数が足りないと言いますが、全ての視覚障害者に盲導犬が必要なわけではありません。白杖で歩くほうがよいという人、ガイドと歩きたい視覚障害者など様々です。そうは言っても、盲導犬を希望する人には、待つことなく提供できる社会の仕組みは欲しいですね。給付や貸与など色々な考え方がありますが、自分の目ですので健康保険で成り立つようなシステムも一方法ではないか。身体障害者補助犬法に関する自治体の予算には限りがあり、寄付や募金が有効な手段となっているのが現状です。盲導犬の繁殖や候補犬(仔犬)の飼育、リタイア犬(老犬)の世話もボランティアにお願いしています。

候補犬の写真
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Q5 人生の途中で失明するとわかったら、とても辛く生きていけないかも知れません。先生は目が見えなくなる段階において、その病気や障害をどのように受容されてきましたか?

A5 一般的には病気や障害を受け入れていくまでの葛藤が心理学の教科書などでは段階別に類型化されていますね。怒りをぶつけたり自己否定により孤立する場合も少なくありません。ただ、私の場合は、病気の受容に対し全く抵抗というものがありませんでした。個々の人生観や状態によって異なるのは当然ですが、原因不明の難病にかかる可能性は誰にでもあるわけですし、それを現代の医学では治せないのですから諦めるしかありません。運命を嘆いても事実は変わらないでしょう。そうは言っても痛みや涙もありました。そんな時に苦しみをカバーしてくれたのが友人や先生、家族、その他、多くの人達からの支えです。しかし、もし発病の年齢が中年期で仕事を失ったり、家庭が安定できなかったら、絶望を余儀なくされていたかも知れません。温かく見守ってくれる人があり、可能性が拓けることで、希望がもち続けられるものと信じています。

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Q6 もし、目が見えたら、何をしてみたいですか?逆に目が見えないことで生活の何に不便を感じますか?

A6 私は14歳で病気にかかり17歳で見えなくなったので、たいていのものは眼に焼きついています。ただ、それ以降、結婚したことで言えば、家族の顔を見てみたいです。それに美しい自然。自動車の運転もしてみたかったし、もう一度野球をする。目が見えないで不便なのは、字を読んだり書いたりすること。パソコンを使うことで視覚障害者にも便利になりましたが、画像などの理解は難しいです。書類に書き込むような作業はできません。買い物ではラップに入った商品の質、値段がわからず困ることや、バス・電車に乗るにも列の最後を探すのに苦労します。食事を作ったり服の柄がわからずコーディネートにも困りますが、私の場合は家族があるので任せています。その他にもあげれば切りがありませんが、音声や触れてわかるユニバーサルデザインの商品で日常生活は少しずつ便利になってきています。後は家族や知り合い、専門家に協力してもらうしかありませんね。

結婚式の写真
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Q7 現在、健常者と障害者のバリアは少しずつ取り除かれてきているように思います。しかし、将来も残り続けるノーマライゼーションの課題があるとしたら、それは何でしょうか?

A7 ノーマライゼーションの問題は20年後に段差がなくなるとか、親切な人が増えて手助けの受けやすい状況ができたりと、社会に参加できる機会は広まると思いますが、難しいのは経済的な課題でしょう。年金や保険で生活できる保障は大切ですが、自分で働き得た収入で物を買い、恋愛もして人生の質を高めることができるようになるのが、本当の意味でのノーマライゼーションではないか。共に働く場の充実を図り、結婚し子供を育てていける社会的仕組みの構築。しかし、障害者を労働力とする価値の難しさを超えることは、ノーマライゼーションに関係する最大の課題だと考えます。

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